人工肛門で和装してみた【前編】~なぜ和装?なぜオストメイト?~
「着物が着たい」という夢が叶いました❤
帯の真下に人工肛門(ストーマ)が当たっても、工夫して着付ければオストメイトでも和装を楽しめました。トイレでお衣装の裾や袖を汚すことなく(両手で)パウチの中身を空ける方法もありました!
この記事は着付け教室 和真(わごころ)の代表で着付師の星野かおる先生にお力をお借りして、「どうしたらオストメイトも和装を楽しめるか」の実験をした記録です。
■後編はこちらから↓
人工肛門で和装してみた【後編】~開発会議と実験の数々(笑)~
オストメイトも着物が着たい
わたし(中島)はオストメイトと呼ばれる人工肛門保有者です。おへその横から腸がぴょろりと出ており、食べたものは全部そこ(人工肛門/ストーマと呼ばれる)から出ていく構造です。おなかにパウチと呼ばれる袋を貼り、定期的にパウチの中身をトイレに捨てる生活スタイルで、障害者手帳を持っています。
2016年にオストメイトになる前から、ずっと和装に憧れていました。高校の授業で浴衣を縫ったり、和装で働ける会席料理屋さんでバイトをしたり、卒業式の袴を自分で着付けたり。いつか自分で帯が結えるようになるのが夢でした。
でも着物ごとの格の違い、柄の意味や季節、所作まで学ぶとなるとちょっと 面倒くさ 大変そう(笑) … と先延ばしにしていたところ、子宮内膜症の悪化でオストメイトになってしまいました。
「早く習っておけばよかった」とぼんやり後悔しましたが、着物の帯が締まる場所と人工肛門の位置が丸かぶりする(人によって人工肛門/人工ぼうこうの位置は違います)ので、手術後は和装をしたいと思わなくなりました。
実家の着物が廃棄処分に!?
すると最近、実家の母が着物を捨てると言い出しました。
「もう着ないし、箪笥はかさばるし、手入れは大変だし。断捨離するわね」
あわてて実家に戻り、初めて母の箪笥の中身を見せてもらったら… おしゃれな柄のお着物がいくつも。
これを捨てるのは惜しいなぁ、母が着ないなら私が着てみようか、と思い、オストメイトが着物を着る方法はないかを探してみることにしました。
(余談ですがこの「母の箪笥から着物を出し入れする」で、やっと着物の畳み方をなんとなく習得しました。いやいや、難しいんですって 笑)
オストメイトフレンドリーサロン構想
話がちょっと脱線しますが、現在エステサロンチェーン エンジェルムーン株式会社の安川代表、Mayumin Design の石井さん、そして親友でトータルビューティーサロン ジュノーボーテ 代表の本橋宏美ちゃんと一緒に「オストメイトフレンドリーサロン」というプロジェクトの準備をしています。
マッサージ、鍼灸院、整体院、エステサロン、ネイルサロン、美容院など、身体に触れるサロンの皆さんにオストメイトについて知ってもらい、さらに各サロンさんの施術メニューに応じて「オストメイト的にはこうしてもらえるとありがたい」と提案させていただき、オストメイトとサロンオーナーさんの双方が安心して癒しの時間を楽しめる場所を増やしていこう!というものです。
初めて安川さんや宏美ちゃんに「オストメイトについて」という講座をさせていただいた時、
「え、なんだ、その程度?そんなこと余裕で対応できるよ?」
とキョトンとされたのが衝撃的で。
内心「コレは結構、面倒なお客さんになってしまうのかなぁ」とドキドキしながら、オストメイトが不安なこと、苦手なこと、こうだったらいいのにと思うことなど、細かくお話させていただいたのですが… 当事者が思うよりずっと、お客さんを想う施術師さんの懐は深いのだと感動しました。
こちらが前もってオストメイトの事情を伝えておけば、他のオストメイトの方がサロンに行ってもスムーズに対応してもらえるのでは!と思い立ち、オストメイトフレンドリーサロンが当事者とサロンオーナーさんがお互いに無理なく手を伸ばして心身を癒せる場所になれるよう、準備を進めています。
「オストメイトの方に着付けをしてみたい」
そのオストメイトフレンドリーサロン構想に興味を持ってくださったのが、時を楽しむ着付け教室 和真(わごころ)の星野かおる先生です。成人式や卒業式など、和装が映えるイベントのたびに何百人もの着付けを仕切るかおる先生は、解放感のあるマンションの高層階で、プライベート着付け教室を経営されています。
「オストメイトの方に着付けをしてみたい」とかおる先生に言っていただき、是非~!と結婚式で使った足袋と下着をクローゼットの奥から発掘し、せっかくだからと母の長襦袢と着物と帯を借りてきて肩に背負い、ストリートミュージシャンのような恰好で(笑) 和真さんへと向かいました。
初めてお会いしたかおる先生は朗らかな優しい方で、着物に対しての知識が驚くほど広くて深くていらして!お会いして30分ほどで私が着物に対して持っていた「なぜ?」のすべてを解決してくださいました。
私はきっちり着るのが正しいとばかり思っていたけれど、ゆるりと着こなすスタイルもあること
着物の格については、フォーマルな場でなければそこまで気にしなくても良いこと
でも「これはこういうもの」を知ったうえでルールを崩している人と、何も知らないで好き勝手やっている人の間には違いが出ること
など、英語学習や音楽の上達にも通じるトピックがたくさんありました。
知識が豊富な、本当の専門家の方ほど柔軟なお考えをお持ちなのかもしれませんね。それぞれのスタイルや楽しみ方を活かした和装を教えてくださるかおる先生に、いよいよ母の着物を着付けていただきます!後編もどうぞお楽しみに^^
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人工肛門で和装してみた【後編】~開発会議と実験の数々(笑)~