2022-05-14

人工肛門で和装してみた【後編】~開発会議と実験の数々(笑)~


前回までのあらすじ:母が着物を捨てると言い始め慌てた心配性のオストメイトが、着付け教室 和真(わごころ)の星野かおる先生に出会い「オストメイトでも着物は着られるか」という実験をすることに。

帯の真下にストーマ(人工肛門)が当たるので、帯を締めた圧でストーマが活動停止したらどうしよう?パウチ(オストメイトはおなかに袋を貼っています)から万が一中身が漏れて着物を汚してしまったらどうしよう?など、不安だらけでかおる先生のところに伺うと…

■前編はこちらから↓
人工肛門で和装してみた【前編】~なぜ和装?なぜオストメイト?~

そして始まる商品開発会議(笑)

かおる先生は既に、オストメイトについて調べてくださっていたようです。わたしのストーマとパウチを見て「あぁ、これくらいの高さがあるのね…」と仰ると、アシスタントの石綿さんと一緒に脱脂綿とガーゼをくるくると巻き、なにかを作り始めました。

かおる先生のアシスタント、石綿さんは多才な女性で!
着付けも和裁もジャズピアノも歌もお得意ということで…
かおるさんと
「フェイスシールドをストーマのカバーにできないかしら?」
と試作を始めてくださいました。

フレンドリーサロンの方にお聞きいただいている
「オストメイトについて」のスライドで、
人によって違うストーマの位置のバリエーションについて説明中。
試作品を試着しながらお話していたので、帯板を巻いたまま企画会議(笑)

素材を変えたり、ひもで形を整えたりしながら、ストーマに紐や帯の締め付けが直接当たらないようにするための道具がその場で出来上がりました(笑) 「本当はこういう素材の、ああいう形のものがあればいいのよね!」と次々と新商品のアイディアを口にしながら、母の着物を着付けてくださいました。
かおる先生の着付けは何しろラインが綺麗で。平面の着物を曲線だらけの身体に着付けて、どうしてどこにもシワが寄らないのか… さっぱりわかりませんでしたが(笑) これまで着付けていただいたどの着物よりも、バシっと仕上げていただきました。しあわせー!
問題のストーマ部分への違和感もなく、たいへん快適でした。秘密兵器(さっきの道具)やタオルで十分にクッションをつくってくださったので、おそらくこのまま半日や1日過ごしたとしても、座ったままでしばらく居ても、ストーマが圧迫されて動きが止まることはなさそうです。


母の着物と帯。着物は小紋で、帯の柄は貝桶(貝合わせの貝をしまう箱)というそうです。帯に光沢があるので、着物と帯の格がずれてしまっているようなのですが… 母の持ち物で揃えてみたいと思い、あえてこの組み合わせにしていただきました。

オストメイトでも、衣装を汚すことなく着物を楽しめる!という安心感と、母の着物をやっと着られた…!という嬉しさで、こんな顔をしています(笑)

はい、じゃあ、全部めくって!

とはいえ、今回はただ着付けていただくだけではダメなんです。オストメイトが和装でトイレに行けるか、着物の裾や袖を汚さず、両手でパウチの中身を捨てられるか、という実験をすることも目的のひとつでした。

フレンドリーサロンのメンバーに褒められ、写真をたくさん撮ってもらった直後、「ハイじゃぁめくりますよ」とかおる先生に着物と長襦袢と下着の裾をべろーんとたくし上げられ、帯から下はパンツ1丁で足袋、という衝撃のビジュアルに(笑)

着物と長襦袢の裾を思いきってまくって、その布を風呂敷のようにして袖までぐるんと包んでしまって、胸のあたりで裾の先端をギュッと結わくと… 着物は汚れる心配もなく、両手も空くという寸法です。

上下が逆になったカラフルなクラゲのような状態で(笑)「じゃあコレでお手洗いに行けるか、やってみて!」と見送られ、実際にお手洗いでパウチの中身を空ける実験をしたところ(この姿を見られて恥ずかしいということ以外は)完璧でした。着物も汚さず、パウチの中身も問題なく空けられました!大丈夫そう!

その衝撃映像もバッチリ撮影(動画&静止画)してもらっていたのですが、さすがにあまりにあられもないので(笑) いつかヨガのレギンスでも履いて、写真を撮ってみようと思います。

じゃぁ次はコレね~

かおる先生は他にもたくさん、違う下着をご用意くださったり、補正や締め方をさまざまに工夫してくださりして… もう3種類、着付けをしてくださいました。

ひとつは夏らしい白い単衣。角だしという帯の結びがおしゃれです。薄い単衣でも、ストーマや周辺の補正が外から不自然に飛び出して見えたりすることはありませんでした。

洋服ではなかなか見ない色使いが新鮮でした。和装でも、自分ではこの色は選ばなかったかもしれませんが、とても明るい雰囲気に仕上がりました。

その次に着付けていただいたのは袴!袴は腰ではなく、胸の下あたりを締めるので、着物の帯よりも負担が少ないのでは?とかおる先生が考えてくださました。確かにストーマへの締め付けもなく、袴はオストメイト向きかも!と感じました。

先生っぽい感じがしますよね、これでお仕事しようかな… (笑)

最後はグラデーションの綺麗な、瑠璃色の色無地。背中にひとつ、百合の飾り紋が入っています。こんな和装が自分でできたら、どんなに楽しいでしょう…!

紋の数によって、フォーマルの度合いが変わるんですって。
これは一つ紋で、袖にふたつ増えると三つ紋、胸にもう二つ増えると五つ紋。

帯揚げ(帯の上の青と白の生地)や帯締め(帯の真ん中の紐)など、小物の素材や色によっても印象が違うんですね

もちろん、すべてのお衣装で「腰から下を全部からげて結び、トイレに行ってみる」という実験は試しました。裾を結わくのにすこし力が要りますが、どの着物でもストーマ部分に負担をかけず、立ったり座ったりも自由にできました。大丈夫!

結論:オストメイトでも、着物を楽しめますよ!

すっかり長くなってしまいましたが、着付師の方がオストメイトについて知ってくださり、着付けを工夫してくださりさえすれば、オストメイトも着物を楽しむことができました。

かおる先生は「イレオさん(イレオストミー/回腸ストーマ保有者)やウロさん(ウロストミー/人工ぼうこう保有者)にも着付けてみたい」と言ってくださっていて… もしこの記事をご覧になったイレオさん、ウロさんで、和装にご興味のある方が居られたら こまば音庵のお問い合わせフォームから中島小百合までご連絡ください^^

母の着物を着たい気持ちがますます加速したため、宏美ちゃんとかおる先生の着付け教室に通おうかと思っています。もしご一緒してくださる方が居られましたら、オストメイトでも、そうでない方でも、お声がけくださいね~。そして他の施術サロンさんで、オストメイトのことを知りたい!というオーナーさんがいらしたら、ぜひお知らせください。オストメイトフレンドリーサロンの仲間としてお迎えします!

■前編はこちらから↓
人工肛門で和装してみた【前編】~なぜ和装?なぜオストメイト?~

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