「伝わる英語」を手に入れよう!発音で大事なのは「美しさ」より「正確さ」
「キレイな発音」と「通じる発音」は違う
英語で歌う日本人の動画などに「発音が悪い」とコメントをつけて騒ぐ方を見かけることがありますが、この本を手に取ったあなたはそういう心の狭い人にならないでくださいね。
特にイギリス英語の日本人とアメリカ英語の日本人は、お互いが「なまっている」と言い合って衝突しがちな傾向がありますが、そんな幼稚な水掛け論に使う時間があるなら練習をしましょう。
そもそもアメリカ「英」語、という言葉自体ちょっと不思議だし(英国の言葉が英語ですから、アメリカ英語なら米語ですよね)、動画に文句つける人の半分ぐらいは指摘に具体性がなかったり、言ってることがチグハグだったりの「別にしゃべれるわけでもないけど 文句いいたいタイプ」という雰囲気のため、個人攻撃以上には聞こえませんからね。
正しい発音は「あってない」ようなもの
英語の発音や言葉づかいは、その人の出身国や性別、時代や育った地域や人種や音楽ジャンルによって大きく異なります。
英語発音を勉強中の私たちとしては「これが正しい発音です!」と誰かに言ってもらいたいところですが、言語は生き物ですから発音も文法も日々変化します。
正解なんて、あってないようなものです。
「食べれる」「見れる」など、日本語のいわゆる「ら抜き言葉」だって、つい最近まで 「間違い」扱いだったくらいですからね、英語でも似たようなことはしょっちゅう起きます。
「アメリカ英語」というサウンドはいつできた?
アメリカがイギリスから独立した1776年、アメリカにはきっとアメリカ語なんて存在していなかったでしょう。だって独立したてのアメリカにいるのは、アメリカ人になりたてのイギリス人ですから。
しゃべるのはきっと当時のイギリス英語ですよね。ちなみに日本は江戸時代後期でした。
杉田玄白と本居宣長がターヘルアナトミア(解体新書)を翻訳したのが1774年ですから、その頃の日本語は時代劇や大河ドラマで聞く言葉づかいに近かったのでしょう。
300年ちょっとかけて日本語が「ナニナニで候(そうろう)」「かたじけない」などと使わなくなったように、イギリス英語はアメリカで変化して「アメリカ英語」というサウンドを育てていきました。
イギリス出身のミュージシャン歌も歌う時はアメリカ英語
クラシック以外の音楽の歌詞として出てくる英語の発音は、ほとんどがアメリカ英語のサ ウンドです。理由は簡単。私たちが聞いているポップス、ロック、R&B、ジャズ、ソウル、ファンク、ゴスペルなど「Contemporary music」と呼ばれる音楽は、ルーツは世界中にあるとはいえ、それぞれのジャンルが発展していった場所というのはアメリカですから。
Eric Clapton、Elton John、The Beatles、Led Zeppelin など、イギリス出身のミュー ジシャンだって、歌うとアメリカ英語のサウンドに寄ることがほとんどです。
東京出身の人でなくても歌うときは共通語になるでしょう?
それと似た感じです。
ちょっと話はそれますが、Please Mr. Postman ではやんちゃなイギリスのロックバンド The Beatles が歌うバージョンと、清楚系アメリカ女子 Carpenters が歌うバージョン では驚くほど雰囲気が違います。
同じアメリカ人でも「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」を Carole King バージョンと Aretha Frankin バージョンで聴き比べてみたり、「(Take Another) Piece of My Heart」でErma Frankin と Janis Joplin の発音がどう違うかに耳を澄ませたりしてもおもしろいですよね。
「伝わる英語」を話すには
英語の発音で大事になるのは「美しさ」より「正確さ」です。
アメリカ人と同じ発音をす ることが目標ではなく、英語の母音の数が作るリズムをきちんと感じてしゃべる、毎回安定して同じ発音を再現できるようになる、そして「英語を話すすべての人にきちんと伝わる話し方」をマスターすることが重要です。
アメリカ英語っぽくしようと力み過ぎず、出 てくる単語の発音をひとつずつ確認しながら、「伝わる英語」のマスターを目指しましょう。