温州みかんを英語にすると
日本のみかんとオレンジは別物。「さつま」と言われたら、焼きいもに使う紫色のおいも。そんな私たちの常識をひっくり返す、「Satsuma(さつま)」という名のみかんの話。
こんにちは。
アメリカ英語発音トレーナーの
中島小百合です。
イギリスの方から、みかんのせっけんをいただきました。新鮮な香り!
THE BODY SHOPって、英国発のコスメブランドなんですね。アメリカにもそこらじゅうで見たので米国発か、動物実験などに反対する毅然としたスタイルからドイツ発だと思ってました(失礼!)ちなみにTHE BODY SHOPの日本フランチャイジーはイオン系列。それにしてもフランチャイジーって、もうちょっとマシな日本語ないんですかね。一瞬フライドチキンにもチャイナタウンにもフランジャーにも空目してしまう。
ふとパッケージを見ると、あれ、Satsuma(さつま)って書いてある。お芋じゃなくて、さつまミカン?みかんは英語でMandarinとか、Tangerineとか、Clementineとか言うけれど、そもそも違いは?そして温州みかんの温州って中国原産だからじゃないの?何故あえて薩摩?
突っ込みどころ満載のギフトに「ありがとう」も忘れて、相手を質問攻めにしそうになりました。調べるうちに、みかんの元祖を巡る温州と薩摩の不思議な関係も分かってきました。今回はみんな大好き、意外と知らない世界のみかん事情をご紹介しましょう。
英語でよく見る「みかん」
オレンジではない、あの「みかん」。英語で何と呼ばれているでしょう。生産地やお店によって名前はさまざまですが、手のひらに乗るサイズで種が少ない、皮をむいて食べるタイプのみかんでは「Mandarin(マンダリン)」「Tangerine(タンジェリン)」「Clementine(クレメンタイン)」の3つが有名です。
マンダリンとは中国清朝の役人のことで、みかんが彼らの礼服と同じ色をしていたので、その果物をマンダリンと呼んだとか。
タンジェリンはモロッコ北端の港「Tangir(タンジェ)」が由来。ジブラルタル海峡に面していて、1840年代にこの港から出ていたイギリス行きの貨物の1つがみかんだったという話があります。マンダリンとタンジェリンの学名は両方ともCitrus Reticulata。オレンジ(色)より黄色いものはタンジェリン、赤いものはマンダリンと言うことが多いようです。
クレメンタインはマンダリンとオレンジを掛け合わせた品種で、たまたまアルジェリアの庭にこの果物がなっているのを発見した宣教師Clément Rodier(クレモン・ロジ)にちなんで名づけられました。
オレンジ&みかん系の柑橘類はとにかく種類が多く、日本語でも英語でもすぐみかん農家のサイトや交配方法、農学論文にぶつかります。「Wikipediaよりちょっと掘り下げたいけど、みかんの宇宙で途方に暮れる手前で止めたい」というバランスを保つのに役立ったのは、EOL (Encyclopedia of Life) というサイト。外国人と果物や魚などの話をするときにも重宝します。
じゃあサツマ(Satsuma)って何のみかん?
じゃあサツマってどのみかん?という話ですが、このサツマが私たちのいう「みかん」(温州みかん)なんです。日本で温州と呼ばれ、イギリスで薩摩と呼ばれる謎のみかん。どんな経緯か調べてみたら、こんなことが分かりました。
温州みかんの「うんしゅう」とは中国の温州市のことなんですが、温州はみかんの産地のひとつとして有名なだけで、じつは発祥地(原産地)は日本の鹿児島県。じゃあサツマが正式名称なのかと思いきや、温州みかんの学名は 「Citrus unshiu」。こたつでみかんを冬の風物詩にしている私たち日本人が鹿児島県発祥のみかんに中国の都市の名前を付けて呼び、海外の方々は同じみかんをSatsumaと呼んでくれているという、たいへん興味深い状況になっていることがわかりました。
名前のふしぎ
農産物や魚の名前というのは面白くて、店頭に並んでいる名前が学名と違ったり、私たちの知っているものはちょっと違うものが同じ名前で売られていたり、売上が上がるようにおしゃれな名前をつけてみたり、いろいろな思惑が渦巻いて私たちの前に並んでいます。
みかんの調べ事でモロッコやアルジェリアの話になるとは思っていませんでしたが、ネットがあって英語が読めると興味の幅と深さがぐんと拡がりますね。迷子にならないように気をつけながら、英語で調べものをする楽しさを感じてみてくださいね。
余談ですが私がこうやって興味津々になるのを見越して、イギリス人の彼女はこの薩摩せっけんをギフトにしようと決めたそうです。よい友人をもちました(笑)