発音練習のお作法その1:頭をハウらせない
発音練習のお作法
じっくりと発音のレッスンに取り組んでいただくうえでふたつだけ、約束というかお願いというか、忘れずに覚えておいていただきたいことがあります。
お作法1:頭をハウらせない
ひとつめ。頭をハウらせないこと。
ハウるというのはハウリングと呼ばれる音の現象で、 カラオケ屋さんやライブ/イベント会場などでスピーカーにマイクを近づけたとき、「キイィィィィィィン」という音が鳴ることを指します。英語では feedbackといいます。
「頭がハウる」というのはもちろん造語で、あたらしい何かに挑戦する途中で何度も起きる、「どうして上手くならないのだろう…」「ダメだ、自分には向いてない、無理だ…」 などの不安や苛立ちで他のことが考えられなくなり、全部を投げてしまいたくなる(そして、「二度とやるもんか」と思ってしまう)瞬間のことです。
新しい習慣を身につけるには3週間必要
新しい習慣を身につけるには3週間かかる、と言われることがありますが、大体そこまで行く前に心が折れてしまったり、お仕事や家族・恋人とのことで忙しくなったりするものです。
事実、英語は「できるようになりたいと前から思っている」お稽古ごとの筆頭ですので、私の「英語を教えています」というとほぼ100%、「ぜひ今度教えてください」という台詞が返ってきます
しかし、口ではそう言っても、そこから本当に「じゃあちょっとやってみようかな」と動く人がとても、少ないのも事実です。それは、これまでの人生のどこかで、英語に対してネガティブなイメージを持ってしまったのではないかと思います。
「英語の先生が嫌いだった」
「海外旅行でコーヒーを頼んだのに、コーラが出てきた」
「会議で先方に何度も聞き返されたうえ、結局通じなかった」
など。
「英語に挑戦したい」「発音をよくしたい」という方のほとんどが、ふたこと目には「でも自分にはできないから…」とおっしゃいます。
そして、その理由をじっくり聞いてみると、たいていの場合「…のとき、うまく行かなかったから…」という傷になっている、 悲しい出来事が見つかります。
大事なのは言葉が心の奥から出てきたものかどうか
言語は表現のツールですから、勇気を振り絞って口に出したことを(たとえ冗談でも) 批判されたりからかわれたりすると、とても傷つきます。自分が大切にしているものが、 誰かの心ない一言や行為で踏みにじられてしまうのは本当に辛いことです。
>英語のレッスンは、繊細な気持ちと向き合うプロセスです。
だからこそ伝わると嬉しいし、伝えられたらいいなあと憧れるのではないでしょうか。
表現は正解がひとつではありません。
大事なのは「その言葉は、自分の心の奥から出てきているものか」ということです。
ナルシストにも卑屈にもならずに原寸大の自分の声や言葉と向き合って、自分のできること、できないことを目をそらさずに認め、上手くいかないときに頭がハウって「もう嫌っっ!」と全部を投げて諦めそうになる気持ちをうまく、 やさしく、なだめる余裕が鍵になります。
この余裕、日々のさまざまな場面で役立ちますよ。
お作法2は次回にご紹介いたしましょう!